明るくない言葉

つらい人生の現実にまつわる言葉など

つらい人生の現実がこんなにも明らかであるのに、ほかの人たちはみなどうしてそんなにたやすく自分に嘘をつけるのだろうと

シゾイドの人はよくいぶかしむ。 「パーソナリティ障害の診断と治療」(ナンシー・マックウィリアムズ)

悲哀の只中の陶酔

境界心性とか、ボーダーレス状態というのは、さまざまな理論による厳密な定義づけや、その間の異同は別として、どの個人の中にも存在するある種の不確定性の謂だと思う。身体と魂、夢と現実、衝動と理性、自己同一性の拡散と固着、感受性と鈍麻性、攻撃性と依存性、強烈な自己愛と事故への冷淡な無関心。こういった限りない両極性の間に、その時々に変幻する状態像、あるいはその断片が浮かんでくる。時には魔術的な力の感情と虚無感の混合、見すてられ感と呑みこまれ感情……これらは、どちらの極にも、悲惨な不安、不満感とともに、悲哀の只中の陶酔がある。それほど虚無感と孤独は人を苦しめると同時に、人を呑みつくす。これらが、自己破滅・自己破壊、他への損傷・暴力へと行動化する姿。

佐治守男「カウンセラーの<こころ>」